『嚥下』と『姿勢』について
嚥下(えんげ)とは…
嚥下とは、口の中で咀しゃくした食事を飲みこみやすい大きさに取りまとめ喉の奥へ飲みこみ、食道から胃へ送り込むことを嚥下といいます。
簡単に言うと、食べ物を飲み込む動作の一連の動きの事です。
普段、何気なく行っている動作ですが、実は複数の筋肉などが繊細に動いて、この飲み込む、という複雑な動作を行っております。
飲み込んだものは普通であれば、食道を通過して胃や腸で消化されます。
しかし、飲み込みが上手にいかないと、気管(空気の通り道。肺に繋がっています。)に物が入ってしまいます。
気管に物が入ることを『誤嚥(ごえん)』と言い、誤嚥した時には気管に入ってきた物を外に出す反射が起きます。
それが咽せる(ムセる)です。
多くの方は、急いで飲み物を飲む時などに咽せた(ムセた)経験があると思います。
その時の姿勢はどうでしたか?上を向いて飲んだ時ではなかったでしょうか?
周囲からわかる誤嚥のサイン
誤嚥の症状は、咳だけではありません。
食事中や前後に以下のような症状が出る場合は、嚥下機能に問題が出ていたり、誤嚥の可能性があったりします。
- 痰がからむ
- 声がガラガラする
- 食事に時間がかかる
- 食べ物が口の中に残る
- 食事中に鼻水が出る
- 食事量が減る
- 体重が減少する
実は、『嚥下』という動作は『姿勢」と深く関係があります。
直立姿勢時(まっすぐ前を向いて立った状態)で喉頭は呼吸をするときに開いていますが、飲み込みをする時には喉頭蓋(蓋のような器官)が倒れ、喉頭口をふさぎ、気管に食べ物や飲み物が入るのを防いでいます。
この仕組みのおかげで私たちは誤嚥しないのです。
上を向いた状態ですと、直立姿勢の時よりも喉頭口が広くなっており、飲み込みをする時に喉頭口をふさごうとしてもふさぎにくくなってしまっています。
そのため、食べ物がダイレクトに気管に入りやすく、誤嚥して咽せて(ムセて)しまいやすいのです。
逆に、下を向くと喉頭口は狭くなります。
そのため、飲み込むときに喉頭蓋がしっかり喉頭口を覆い、食べ物が気管へ入っていくのをふせぎやすくなります。
特に高齢者の方は誤嚥を起こしやすく、注意が必要です。
寝たきりの方に食事を与える際などは、可能であれば上体を起こし、食事を与えることで誤嚥のリスクは低くなります。
誤嚥をしてしまった際に口腔ケアを行い、清潔に保つことで、誤嚥性肺炎のリスクを軽減することも可能です。
当院では定期的なメインテナンスを行っておりますので、お気軽にご相談ください。