歯周病が全身に及ぼす影響とは?②

歯周病が全身に及ぼす影響とは?②

歯周病が全身に及ぼす影響とは?②

2022.11.29

前回の続きです。

歯周病と誤嚥性肺炎の関係

誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまうことで発症する肺炎です。
肺や気管は、咳をすることで異物が入らないように守ることができます。しかし、高齢になるとこれらの機能が衰えるため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入ることがあります。
その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。
特に、脳血管障害の見られる高齢者に多くみられます。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。

歯周病と骨粗鬆症の関係

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は、全身の骨強度が低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気で、日本では推定約1.000万人以上いると言われています。そして、その約90%が女性です。
骨粗鬆症の中でも閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能の低下により、骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下により発症します。

歯周病と骨粗鬆症

閉経後骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲンの欠乏です。
エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。
また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。
多くの研究で、骨粗鬆症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。
したがって、閉経後の女性は、たとえ歯周炎がなくても、エストロゲンの減少により、歯周病にかかりやすく、広がりやすい状態にあると言えます。
また、骨粗鬆症の薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)というのがあり、これを服用している方が抜歯などをした場合、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。
歯周病でぐらぐらしているから自分で抜く、などということは絶対に行わないようにしてください。

歯周病と関節炎・腎炎の関係

関節炎や糸球体腎炎が発症する原因のひとつとして、ウィルスや細菌の感染があります。
関節炎や糸球体腎炎の原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の多くは、歯周病原性細菌など口腔内に多く存在します。
これらのお口の中の細菌が血液中に入り込んだり、歯周炎によって作り出された炎症物質が血液に入り込むことで、関節炎や糸球体腎炎が発症することがあります。

歯周病とメタボリックシンドロームの関係

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪蓄積を臍部の内臓脂肪面積100cm2以上と定義、ウエスト周囲径が男性で85㎝、女性で90㎝以上を基盤とし、さらに、1)血中脂質異常、2)高血圧、3)高血糖の3項目のうち2つ以上に異常所見が見られる病態です。
大きな特徴は内臓脂肪を基盤とすることであり、高血圧、高血糖、脂質異常の値がさほど高くなくても脳卒中や心筋梗塞の危険性が高くなります。

歯周病とメタボリックシンドローム

詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病の病巣から放出されるLPS(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。
また、重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。
さらには、この慢性炎症が個体の老化を促進するという論文も出てきました。
このように歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。

歯周病は正しい方法で行えば予防できます

歯周病にかからないようにする、もしくは悪化させないようにするためには、ご家庭での毎日のケアと歯科医院での定期的なケアの両方が欠かせません。
歯周病は、適切な対処をすることにより、十分に予防が可能な病気です。
現在多くの方がかかってしまっている原因の多くは、正しい対処が行われていない、ということにも起因しています。
歯周病ケアを正しく行うことで、歯の周囲組織を良い状態に保ち続けることができ、一生ご自分の歯で噛めることも決して夢ではありません。
当院では、確実に歯周病を予防できるよう予防ケアに重点を置いた治療を行っています。
もし歯周病にかかってしまっている場合には、患者様の進行状態に合わせた治療を行い、ご家庭でも患者様ご自身が適切なケアができるようアドバイスいたします。
歯周病ケアがお口の健康、体の健康を左右すると言っても過言ではありません。
ぜひ私たちと一緒に、大切な歯を歯周病から守っていきましょう!


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